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株式会社ジェイテクトtop2021年11月09日

環境循環性に優れるギ酸を用いた新燃料電池の開発

株式会社ジェイテクト

2021年11月09日

株式会社ジェイテクト(本社: 愛知県刈谷市、社長: 佐藤和弘、以下「ジェイテクト」)は、環境循環性に優れるギ酸を有効活用した、新燃料電池の研究開発に取り組み、その実用化を目指した国内初の50 W級機能実証機を開発しました。2018年より、燃料電池分野に精通されている金沢大学の辻口准教授と直接ギ酸形燃料電池の共同研究を進め、今回の成果に繋がりました。ジェイテクトは、この直接ギ酸形燃料電池「J-DFAFC(JTEKT-Direct Formic Acid Fuel Cell)」をカーボンニュートラルの要素の一つとして、脱炭素社会の実現、SDGsの目標達成に貢献します。


<直接ギ酸形燃料電池の機能実証機 (50 W級)>

■研究開発の背景

 ジェイテクトでは環境チャレンジ2050を掲げ「低炭素社会の構築」「循環型社会の構築」など5つの項目で環境指針を掲げています。この取り組みの一環として、自動車部品、軸受、工作機械など既存事業の枠を超え、脱炭素社会への対応として「つくる」「つかう」「もどす」の視点で、新エネルギーの研究に取り組んでいます。

 

一般に新エネルギー資源としては、水素、アンモニア、アルコールなどがありますが、ジェイテクトでは環境循環性に優れ、エネルギー密度が高いギ酸に着目してきました。

 

このような中、燃料電池分野に精通されている金沢大学の辻口准教授と2018年より直接ギ酸形燃料電池の共同研究をスタートし、産学連携により研究を加速し、今回の成果に繋がることとなりました。

 

■ギ酸について

 ギ酸は、工業分野では樹脂や酢酸製造時の副産物としても生産・流通しており、主に畜産・農業分野で使用されていますがその使用分野は限定的で、エネルギー資源としては未利用です。ギ酸の分子構造はHCOOHで、水溶液は燃焼・爆発の可能性がなく安全性に優れ、環境循環性が高いことから、他の発電用燃料と比べ、入手性、環境性の点でも優位です。また将来的には、人工光合成に代表される二酸化炭素と水の反応で合成されるギ酸の活用も期待できます。ジェイテクトでは、このように環境循環性に優れるギ酸を燃料として発電に利用できないか、すなわち新エネルギー資源として活用できないかとの思いで研究開発を進めてきました。

 

■発電原理

 直接ギ酸形燃料電池(J-DFAFC)は、固体高分子形燃料電池(PEFCPolymer Electrolyte Fuel Cell)の一種で、燃料として水素ガスやアルコール水溶液ではなく、ギ酸水溶液(HCOOH)と空気中の酸素(O2)を用いて発電する燃料電池です。

 

負極(アノード)に供給されたギ酸水溶液が、触媒により二酸化炭素(CO2)に分解され、その際に水素イオン(H+)と電子(e-)を生成、生成された電子は外部回路を通り、水素イオンは電解質膜を通りカソード(正極)に達し、酸素と反応し水(H2O)を生成します。これらの化学反応により電力が発生します。


<発電原理>

■特長

 今回開発の機能実証機では、金沢大学の独自パラジウム触媒(Pd/C)技術、ジェイテクトの既存事業で長年培ってきた材料・表面処理技術、解析技術、モノづくり技術などを駆使し、発電効率を向上しました。電池サイズを9 cm角、セルを複数枚積層した構造で、メタノールを利用した燃料電池よりも高い、最大出力密度290 mW/cm2を達成しました。低騒音・低振動で稼働させることが可能で、液体型燃料電池の特長を活かした長時間の発電が可能です。


<発電セル外観>

 

■今後の取り組み

 現在、数百W級の燃料電池の開発を進めており、社内での利用を計画しています。さらには1 kW級の開発を進め商品化を目指します。照明、通信用電子機器などの電源をはじめ、非常用電源、遠隔地電源、さらには住宅や施設での小型分散電源などの用途をねらい、出力密度の向上、電力安定化の技術開発を推進していきます。

 

■今回の開発を通じて貢献可能なSDGsの目標

7.1 2030年までに、安価かつ信頼できる現代的エネルギーサービスへの普遍的アクセスを確保する。

 

7.2 2030年までに、世界のエネルギーミックスにおける再生可能エネルギーの割合を大幅に拡大させる。

 

9.1全ての人々に安価で公平なアクセスに重点を置いた経済発展と人間の福祉を支援するために、地域・越境インフラを含む質の高い、信頼でき、持続可能かつ強靱(レジリエント)なインフラを開発する。

 

12.5 2030年までに、廃棄物の発生防止、削減、再生利用及び再利用により、廃棄物の発生を大幅に削減する。

 

13.1全ての国々において、気候関連災害や自然災害に対する強靱性(レジリエンス)及び適応の能力を強化する。


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